カルチャーヒーロー

 叶精二氏が自身の「照葉樹林文化圏人である私」を対象化せずに書かれた「もののけ姫論」は、滅んだものには違ひないけれどもナラ林文化を農耕文化としてみてゐない。

 ナラ林文化は、ニジェール川上流域で発生した、a夏作物系の一年草をb条播して、c

人力で除草しまくって作るサバンナ文化と、チグリス河・ユーフラテス河の辺で発生した、a冬作物系の一年草をb散播(ジャン・フランソワ・ミレーの「種まく人」みたいなの)c動物とかこき使って作る文化のコンボである。なので、イネ科の一年草を条播して、豚とかをなんとなく使って、作物を作る、と言ふものだったらしい。

 ここから、さういふ文化圏の人は「その辺の生き物を家畜として使ふ」と言ふ妄想が出るのは当然である。のでアカシシ(多分カモシカのでっかいの)を飼ってみようといふことになったらしいのである。その辺が叶氏の「動物のなんちゃって利用」をデフォルトとして農耕文化を見てゐるらしい文章から抜けてゐる。

 さうすると、最後のなんかかっこいい文章は「ハイヌウェレ型神話とギルガメシュ神話を合わせると言ふあほな展開」になるわけであるが、おそらく偶然であらうが、「栽培植物と農耕の起源」によれば、一万ん千年前、東南アジアで発生した、a堀棒で穴掘って、b喰ふ所の端っこを埋めて育てる原始的な農耕文化が、文化として成熟する前、ここの農耕文化をなんとなく修めたアシタカっつかシュナが、ヤックル(可能性として犬と猪と鶏があげられる。とてもいやである)を伴ってチグリス河 ユーフラテス河の辺へ漂着し、何しろイデオロギー化してゐないのでフットワーク軽く冬作物の禾本科の植物を利用しようと思ひたち、完全に独自の農耕文化を一発拵へた と言ふ可能性はあるさうである。

 

 ナラ林文化圏は 朝鮮が入ると言ふナイスなものなので、それがどこから入ったか「九州から吸収」か日本海経由で東北以北へ行ったか不明ださうであるが、大根は一応地中海農耕文化のたまものなんであるが、このポジションからの「東西の別」として、家畜の、農耕動物が西日本では牛、東日本では馬 になってゐると言ふところがあるさうである。で、「もののけ姫」は、なんとなくそれを踏まえてさらに「一応照葉樹林文化圏の、家畜のなんちゃって利用(タタラ場の牛やアサノ公方の使ひとかが使ふ馬)VS家畜の積極的な利用をするナラ林文化圏のエミシ」といふ濃い対立が描かれる。さうするとエミシの村ではカヤ(「は兄様をいつも思ってをります ずっと ずっと・・・」て言ってる土人のおねーちゃん)がアカシシを屠畜する可能性はめちゃくちゃ高いのである。はうっ