謎の鳥

私説博物誌 で 筒井康隆大先生は恐竜の発見 (ハヤカワ文庫NF)  を引き合ひに、エドワード・B・ヒッチコック大先生とやらの、三畳紀の地層にある「鳥の足跡」を探して回った話を紹介してゐる。

 なんか後に始祖鳥が発見されたので、三畳紀コネチカット渓谷に「拾弐フィートか十五フィートある無翼の鳥」がゐた筈説が保障されたとか思ひ込み、その幻の鳥の創作に血道を上げたさうである。

 三畳紀と言ったら一応ワニさん大繁栄ださうである。

 ヒッチコック先生の探し発見した「鳥の足跡」は、へたすると「こんなんですけどワニの足跡です」とかの可能性があるのがあの業界の恐ろしいところなのだが、

 恐竜が鳥類より説は、二十一世紀には別に普通な説になったが、なぜかこの幸福なトンデモ親父が一八三五年に三畳紀から「鳥」を発見してゐる、鳥類はまた別にアレなものがあるのだが、ヒッチコックの悲劇が彼の死後わけのわからんところで報はれたっつうかなんつうかなわけである。まあおすにえる・C・マーシュ大先生の「恐竜=鳥」説はヒッチコック大先生が支持してるかは知らんが。

 筒井先生は男のロマンがある方なので、「超破壊的滅茶苦茶殺戮的猛攻撃的革命的凶暴的出合頭卒倒失神悲鳴絶叫阿鼻叫喚的野蛮獰猛非常残忍貪虐凶穢(きょうあい)的肉食動物」ティラノサウルスを挙げる。

 「えすえふ作家だから妄想力が強い」ので「馬鹿げた想像」とかこきながら、「ティラノサウルスは鳶のような疳高く弱弱しい声で鳴いてたんでは」とこいておられる。

 最近の研究では、ティラノサウルスはハトか鶏に近いさうである。「ピーヒョロロロ」でなくて「クルッポウ」とかの鳴き声が、当時のアメリカの大地を恐怖のずんどこに陥れてゐたらしいのである。多分違ひさうだけれども、でも何とかいって、タイムトラベルした後アルバートサウルスだか何だかはいいとして、ナノティラヌスだかもふもふ「怪獣」ユティランヌスが「こっかどぅーどぅるどぅー」とか叫んでゐたりするのを目撃する可能性はあるのである。先生の妄想力恐るべしである。